無知と無能の間に

無知無能者、固人之所不免也

キュレーションサイト騒動の照らす道筋、その1〜語られなかったパクリツール問題

感想:本当に賢い奴というものはいるものだ。

これまでの流れ

もともともは医療系のキュレーションサイトに似非科学にもなっていない情報(肩こりの原因は悪霊みたいなもの)の指摘からはじまったものだが、いままで燻っていたキュレーションサイトが外部情報を丸パクリする実態が世間一般にしられることになり、一番の槍玉にあがったDeNAがすべてのサイトを閉鎖。経営陣が謝罪会見するに追い込まれた。DeNAの他にも、サイバーエージェントリクルートも運営していたキュレーションメディアの閉鎖や見直しを表明した。

キュレーションサイトの運営

  1. テーマにそったキュレーションサイトを立ち上げ、記事を外部より募集する
  2. 外部記事を 「2000文字1000円」で買い取る
  3. まとまった記事をあつめ、さらにSEOテクニックを駆使して検索エンジンで上位にくるようにする
  4. 検索からのクリックによる広告収入を収益とする

「2000文字1000円」というのは、大手の出版社の原稿料の1/50〜1/100程度といわれている。

安い単価の背景

このような単価では取材して文章を起こすというような作業はペイできない。DeNAの会見でも単価の安さを指摘していたが、それは運営側も理解していたはずである。会見では曖昧な回答をしていた。要するに運営元が入稿する外部ライターが記事パクリの実態を知っていたかどうかは、もっと突っ込むべきポイントであった。

記者会見で 「2000文字1000円」という安価でライターを酷使していたという指摘をされていたが、既存メディア側の記者の方も思い込みがあった。このキュレーションサイトの記事はまともなライターがタイピングすらしていない。なんども指摘するが 「2000文字1000円」ではまともな執筆作業(取材、起稿、修正などなど)は割に合わないわけで、運営側がそれを知らないというのは無理筋というものだ。入稿される記事がパクリやコピペから作られたものであるという認識があったのは、明らかだろう。

いろいろ事情に詳しい知人にいわせると、人力ですべて書いていたといえば、違うようだ。「リライトツール」というものがある。要するにパクリツール。これは、記事にしたいキーワードをいくつか入力すると、ネット上をクロールしてブログやSNS等から、まとまった文章を引っ張ってくる。WEBページをスクレイピングする方法から、最近のブログサイトやSNSではAPIも用意されているので、それを利用して、大量に元ネタになる記事引っ張ってくる。そして検索エンジンの上位にくるように文章を再構成(キーワードを何度も繰り返す配置にするetc)までを自動的に行うものだ。

この手のリライトツール(パクリツール)を使うと1時間で2000字前後の記事を10〜100程度、作ることは可能なようである。先のクソ安い単価にも関わらず、このツールを使ってパクリ記事を乱造したうえでキュレーションメディアに入稿すれば、1時間あたり10,000円〜100,000円の収入が得られるという計算になる。ということは、数台のPCを活用すれば、台数分を乗じた額になる。実態として、キュレーションメディアに入稿していたライターの過半は、IT系エンジニアがサイドビジネス感覚で、このリライトツールを駆使して泡銭を稼いでいたということだ。とある人物は月に100万円に近い額を稼ぎだしたとも聞く。ま、この手の話は膨らむ傾向があるので、話半分に聞いておいたほうが良い。

専業アフィリエイターとよばれる、どちらかといえばキュレーションメディアにパクられた側の連中(こいつらもリライトツールを駆使していたわけだが)がこれに憤慨して批判記事を書き飛ばし、ネットライターもその批判に同調し、一方で、大手の伝統的な出版メディアの記者はこの手のツールの存在すら知らず、ライターの労働哀歌みたいな主張をしていた点に、社会の絶望的な分断を見た気がする。

ではこれからどうなるのか?

識者の中には「これでWEB系メディアも記事のチェックや著作権の配慮など、既存メディアと同様のモラルが求められる方向に進むようになるだろう」とコメントしていた者がいた。しかし、それは本当だろうか?希望的観測に過ぎないのではないか?

恐らく、キュレーションサイト方式は、さらに黒い方向に進化することだろう。少なくても人間の介在をほとんど必要としないビジネスモデルで泡銭が稼げることを証明し、このような方法があることを広く知らしめてしまったからだ。

まず、検索エンジン側のGoogle様含めて、ITメディアの人々は徹底的な自動化推進論者であり、人を介した内容チェックなど話にならないと根底で思っている。

またパクリツールはさらに進化していく。現状では丸パクリでしかないわけだが、ディープラーニングが取り入れられるようになるだろう。もっともディープラーニングも元データを大量に読ませ込むというのは変わらない訳だが、まともな文章が吐き出されるようになるのはもうすぐだ。そのようなツールが出回れば、もうパクリなのか機械学習の効果なのか、人間にはわからないような文章を吐き出すことになるだろう。

しかも機械が大量に出力される文章は、やはり自動化された機械によりモラルチェックがなされるようになる。ディープラーニングについては思うところがあり、まとまれば別記事で書き飛ばしておきたい。機械化された情報を大量に収集して、機械がさらに再構成した情報を吐き出すようになる。これがGarbage in Garbage outになるのかどうかは注目していきたいし、この人工知能の問題は別記事で、時間があったら書きとめたい。

そして、既存メディアとIT系には深い断絶があった。既存メディアにはあるていど読める記事にするには、取材費やら調査費やらが必要で、それらを込みで高い原稿料を支払っていた。それが既存メディアの不文律でありモラルハザードでもあった。ところが、ITメディア系はそんなことはまったく考慮の外でひたすら安い単価で仕入れることが目標達成への道であった。この断絶こそが、DeNAの謝罪会見のなにやらお互いの姿を掴み損ねている光景として現れたということなのだろう。

いやはや、21世紀っぽくなってきましたな。上記予想が当たるかどうかはわからない。しかし、100%人力でブログを書くという行為は絶滅危惧種に指定された馬鹿のやること・・・になるのも、もう少し先の未来なのかもしれない。

2016年アメリカ大統領選挙まとめ、その4〜ネット民主主義の行き着く先はポピュリズムなのか?

結局、2017年以後、トランプ大統領が誕生した後に何が起きるのか?

トランプの一番の問題点は何か?

町山智浩氏が指摘していることだが、トランプという人物は共和党の大統領選に出たことのあるパット・ブキャナンが人種差別発言をしたときに「そんな発言すべきではない」とたしなめた。フォックスニュースのトランプ氏へのディベートでも「過去に人工中絶も賛成だったし、同性婚容認であったし、ビル・クリントン政権も支持していた」と指摘されていた。

要するに、トランプという人はポリシーがまったくないということだ。どういう国にするかという理想をもっていない。アメリカの軍事拡張も、メキシコとの壁を築くという発言も、イスラムへの差別発言も、「選挙のためのセールストーク。言ってみただけ」ということだ。つまり、トランプという人物は「アメリカをこういう国家にしたい」という理想は無い。だから前言を覆すというのは、なんの躊躇もなくやることができる。

かっこ良く言えば「予測不能」ということだ。たぶん「最終的には、金で転ぶ人」なのだ。「その手の平いつ返したんだ?」というくらい180度の方針転換は平気でやる。しかも感情的になりやすい。だからロシアや中国はトランプ氏を歓迎しているのだろう。「こいつを転がすのは簡単なことだ」と。

人間は、良くないことが起きた時に、「いやいや状況は案外よいかも」と根拠の薄い楽観論に傾くように遺伝子が設計されている(自己防衛バイアス)。トランプまとも論を見聞きするにつれ、人間というのは頭が良いと思うような人物でも、根本的にこのバイアスを制御できないものだなというのが分かっただけだった。

まさか?

  • 懸念その1

トランプ氏の政策をマジでやろうとすると、公共事業拡大による財政出動と大規模減税による歳入減が同時に起きるわけで、アメリカの財政赤字は拡大する。とすると手っ取り早いのはアメリカ国債のデフォルト(不払い)なわけだ。そして一番悲惨な状況になるのはアメリカ国債を大量に保有している日本と中国なわけだ。まさか?

  • 懸念その2

核のボタンを押してみる。まさか?

政治は?

2017年は、フランス大統領選挙があり、極右国民戦線のルペン女史が選ばれる可能性がある。オランダも総選挙があり、EU離脱派が勝利するかもしれない。EUはフランスが抜ければ、実質崩壊ということになるだろう。通貨と経済と安全保障の統合だけ残すという方法も、あるかもしれないが、いずれにせよ揉める。緩やかな連合を目指す形もあるかもしれないが、壊れる時間に比して再構築には時間がかかる。

日本は、もちろん憲法から人権を削除し、戦前の価値観に回帰したいと願い岸信介を神聖視している我らが安倍ちゃんだ。ポピュリズムに関しては、世界が日本に追い付いてきたという感もある。「都民ファースト」とか寝言をいっている現代に現れた東京の「淀君」に関しては、別記事で茶化しておきたい。

経済は?

アメリカは政策金利を上げる方針を確認した。EUは来年のフランスとオランダの選挙も見据えて、資金を引き揚げる動きがでるかもしれない。となると、トランプ氏が正式に大統領の座につくまではドル高傾向が顕著になるだろう。ただ、トランプ氏は海外生産を国内に戻して国内のブルーカラーに仕事を与えるというのは、「いまのところ」は一貫しているわkで、基本的にはドル安論者と思われる。恐らくは行き過ぎたドル安(とトランプが考えれば)、中国元や日本円に対して切り上げ圧力を売ってくるかもしれない。目論見通りであれば、来年前半は、為替が大きく乱高下するかもしれない(外れても知らない)。

結論

要するに先が読めない。

トランプ氏を支持している人達も根っから右翼思考というわけではなく、ラストベルトの人達は4年前にオバマ氏を支持し、しかも今現在もオバマ氏を支持している人たちが、トランプ氏に投票するということが起きた。雑多な集合で思想的な左右を超えて、目の前の不満からトランプを支持したわけで、まったく理念の無いトランプが大統領に選ばれるというのは、ディストピア小説そのものだ。

2016年は、ソ連崩壊から四半世紀の25年が経過し、勝利したはずの資本主義陣営の中にが新自由主義グローバル化に反発する勢力がいよいよ先進国とよばれる地域にも侵食した。ソ連の存在とソ連との対立は、核戦争という「わかりやすい世界の終末」を提示していたが、ソ連の崩壊で、世界の見方が良くわからなくなった。反グローバル化というものも、結局のところ「『反アメリカ連合』『反新自由主義』『反エスタブリッシュメント』とう名のグローバル化(寄り合い所帯)」ということだったわけで、グローバル化で不利益を被ったと思っている人々の被害妄想をどう解決するのか(解決しないのか、できないのか)という問題なのかもしれない。

2016年アメリカ大統領選挙総括、その3〜Trumpに投票した白人層とは?

オバマ大統領はこのラストベルトと呼ばれる地域での獲得票数を積むことで激戦週とよばれるこの地域を制して、大統領の座についた。ところが、民主党支持層である労働組合がもともと強いこの地域で、軒並みクリントン氏は得票数を落とした。結果、トランプ氏がこのラストベルトで選挙人を獲得して、逆転勝利を手にした。

2016年10月のアメリカの全国平均の失業率は4.9%だった。ラストベルトのペンシルバニア州は5.7%、イリノイ州5.5%と全米平均を上回っていた。そして、このラストベルトの失業対策を熱心に取り組んだのは、オバマ大統領である。この労働組合の強いこの地域の工場には、オバマ大統領の肖像を掲げてあるところが数多くあるという。

アメリカ中年白人の死亡率

2015年にノーベル経済学賞を受賞したプリンストン大学のアンガス・ディートンとケースの共著論文「21世紀の非ヒスパニックの白人中年男性の疾病率と死亡率の上昇」が注目を浴びた。

この論文の中で、まず10万人あたりの45〜54歳の死亡率が1990年から2010年までどのように変化したかが示された。以下に、そのグラフ。

f:id:projectdprompt:20161227174518p:plain 出典: Anne Case, Angus Deaton "Rising morbidity and mortality in midlife among white non-Hispanic Americans in the 21st century"

非ヒスパニックの白人アメリカ男性だけ、死亡率がやや上昇していることを示した(図中のUSW)。ヒスパニック系アメリカ白人男性を含めフランス、ドイツなどでの死亡率は劇的に減少しているのにもかかわらずである。そして非ヒスパニックの白人アメリカ男性の死亡率を上げている死因についてが、次のグラフである。

f:id:projectdprompt:20161227174500p:plain 出典: Anne Case, Angus Deaton "Rising morbidity and mortality in midlife among white non-Hispanic Americans in the 21st century"

肺がんによる死亡を抜いて、急増している「薬物中毒死」が1位、「自殺」も増加して3位。4位の慢性肝疾患も増加している(アルコールの過剰摂取が原因だろう)。この3つが非ヒスパニックの白人アメリカ男性だけ死亡率を押し上げている要因なわけで、要するに、うだつのあがらない生活に嫌気がさして、酒やドラッグに溺れ、自殺を選んでいるという状況を表している。

このグラフにはでてこないが、アメリカの同年齢層の黒人男性の死亡率は、白人のそれよりも高い。ただし、こちらは減少傾向を示している。そして同年齢層の白人中年女性も死亡率が減っておらず、45〜54歳の年齢層の死亡率の上昇傾向は「男女の高卒以下の学歴の白人男性と女性」のみにみられたとしている。

先進国の中間層は消えるのか?

アメリカの大学進学率は74%(日本は51%、OECD加盟国平均は62%)で、アメリカ白人の高卒層というのは時間が経過すれば駆逐される存在なわけだ。4年後、8年後には確実にトランプを支持した高卒白人ブルーカーラーは減っていく。

グローバリズムで安い賃金で働く途上国に仕事を奪われる中間層、あるいはマジョリティーであったブルーカラー層が、段々と所得を奪われているという、漠然とした恐怖を抱いいているということだ。で、先進国の仕事を奪った方である、途上国では、その繁栄から取り残された人達が先進国から押し付けられた(と理解している)市場主義やグローバリズムに対する反発がおき、左翼的な政党や政策への支持をする。一方、仕事を奪われる方の先進国の置き去りにされた人達が右翼的、排他的な言説になびくというのは、どういうことだろう。誰か分析してくれないだろうか。

参考

2016年アメリカ大統領選挙まとめ、その2〜ビッグデータとはなんだったのか?

ネイト・シルバーという統計学者がいる。メジャーリーグベースボールで各チームの選手が将来どのような成績を残すかというシステムを作って名を売り、2008年の大統領選挙で50州のうち49州での選挙結果を当てたという人物だ。2012年の大統領選挙では50州とコロンビア特別区(ワシントン)の結果をすべて当てた。日本でも彼の信者が多くいる。

さてネイト・シルバーが今回どのような予想をしたかといえば、投票日の10日前の時点でヒラリー・クリントンが勝利する確率を80~85%と予想していた。また共和党支持のテレビ局であるフォックスニュースは、ヒラリー・クリントンの勝利が81%であると報じた。

しかし、出口調査の結果が整理されていくと、各メディアともにトランプの当選を報じるようになっていった。

つまり「大統領選挙の予想報道を見て、クリントン支持者は選挙に行くモチベーションを保てなくなり、トランプ陣営は激戦州に力をいれて消極的支持者を投票に向かわせた」というストーリーを支持するものだといえる。

では問題は、これまでのような固定電話に無作為に電話をかけて選挙予測する方法は捨てるべきなのか?ということになる。

子供大統領選挙

「子供大統領選挙(Kids Vote)」、これまで2回外しただけであったが、今回の選挙では子供大統領選挙もクリントン当選という結果になったが、外したことになる。

この子供投票は、1964年の選挙から、ずっと正しく結果を予測してきた。その理由として以下のようなことが考えられる。

  1. 標本母数が15万人もいる
  2. 家庭で交わされているであろう親たちの本音トークを子供たちが聞いているはずで、それが結果に反映される
  3. 子供投票がターゲットになる子供を持つ親の年齢層(30〜49歳)が全投票者数で占める割合が高かった

この予想が外れたのは、極めて示唆的である。以下のことが考えられる。

  • 親の会話に嘘があった(トランプのような人物を)
  • 親の会話でトランプの話題があったが、子供の正義感から、とてもトランプに投票することはできなかった
  • 子供を持つ親の年齢層があまり投票に行かず、全投票者数で占める割合が相対的に減った

大統領選挙は予測可能か?

今回の大統領選挙で統計学の専門家たちが、「科学的アプローチ」だとか「データ重視」だとかを一切理解せず、自分の見たことしか信じようとしない白人ブルーカラーにノックアウトされたというのは示唆的である。少なくとも、これまでのように投票日の1週間前までに固定電話の無作為抽出から選挙予測をするというアプローチは死に体といえる。

「金曜日の夕方に紙おむつを購入する人は、ビールも一緒に買いに行く」といような、ほとんど無意識の行動として習慣化され、かつデータが取りやすい事象(金曜日の夜は年に50回以上やってくる)ような事象の予測はたてやすい。一方で、大統領選挙は4年に1度である。データが少ない。しかも当選予想が出た後で、意思が変わる。また投票直前でも意思が変化してしまう。

となると、選挙予測に人工知能的なアプローチはあるかもしれない。しかし、4年に一度しかデータが取れないとなると、完全な機械学習による予測は200年とかかかる。人工知能に投票予測をさせるより、人工知能に大統領業務をやらせる方が早く到来するかもしれない。

少なくとも、「統計学が最強の学問である」なんて本があったが、その「思いあがった態度」は捨てなければならないだろう。

2016年アメリカ大統領選挙まとめ、その1〜女の敵は女だったのか?

大方の予想が外れ、ドナルド・トランプアメリカ大統領選挙に勝利した。みな、「まさか」と思いつつ、「もしかしたら」ということが現実となった。私も、「なんだかんだいいながら、ヒラリー・クリントンになるのだろう」と思っていた。開票開始直後は、共和党支持の多い田舎から開票結果がでてくるので、トランプ氏リードであった。メディアの予測もまだヒラリー勝利であったような気がする。しかし、開票が進んでも一向にヒラリー・クリントンの票は伸びない。そのうちアメリカのメディアがトランプ氏勝利の選挙予想に切り替わり、

備忘録として今回の大統領選挙についてまとめておきたい。

総得票数と投票分析

AP通信によると、総得票数では開票率99.7%の段階でトランプ氏の得票数は6120万1031票(得票率47%)。クリントン氏の6252万3126票(同48%)。100万票以上の差でクリントン氏の獲得票数の方が多いという結果になっている。

ブッシュ前大統領の選挙参謀だったKarl Rove氏によると「トランプ氏は、2012年の共和党候補ロムニー氏の得票数より0.5%減らしたが、クリントン氏はオバマ大統領より3.4%を失ったことで、ヒラリー氏の自滅」と分析した。

様々な世論調査で、高卒以下の白人ブルーカラーがトランプの最大の支持者だと指摘している。自分の生まれた町から一生出ることない人たちだ。「仕事を奪っているのは移民者だ!」「中国製品を締め出すために高い関税をかけろ!」といわれれば、それを論理的に検証することなく、目の前の現実に対して、分かりやすいアジテーションに飛びつく人たちだ。

白人女性の投票行動

さて、出口調査では、女性のうち54%がクリントンに投票している。しかし、以下のグラフだ。

f:id:projectdprompt:20161227174445p:plain 出典:NBC News

白人女性全体で、トランプ支持が78%で、ヒラリー支持が18%。保守系の女性のトランプ支持が78%で、ヒラリー支持が18%というのは、にわかに信じがたい。「美人コンテストで優勝者したヒスパニック系女性の体重を馬鹿にしたことについて批判されると、自分は正しいと言い張り、自分をレイプ魔だと認めたようなビデオが出て、トドメを刺されたのになぜ?」。理由はどうであれ、このような女性に対する冒涜は、白人層の女性にはまったく効果がなかった。あるいは、トランプ以上にヒラリーを嫌っていたのかもしれない。アメリカが、私達が思っているよりも進歩的ではなかったのかもしれない。あるいは、社会が進歩的(あるいは、いわゆるリベラル的な考え)が浸透していくにつれ、そのようなものに対する反感が増していったのかもしれない。

いずれにせよ、トランプ氏の暴言は致命傷にならなかった。ばかりか、ポリティカル・コレクトネス(政治的正しさ)にうんざりしていた人たちに爽快感さえ与えた。今年2月に行われた世論調査では、トランプを支持する人のうち20%が「奴隷解放は間違い」と答えているのだそうだ。

選挙報道を見ていても、「女性初の大統領」というテーマは語られずにいた。そこは、オバマが立候補した2004年の大統領選挙の時の「初の有色人種のアメリカ大統領」が誕生するかもしれないという熱気とは明らかに違っていた。

有権者の数パーセントの投票行動で結果が大きく変わる選挙制度というのも恐ろしい。それにしても、勝利を確信したヒラリー支持者が投票に行くのやめる一方で、熱狂的トランプ支持者が年寄りを引っ張りだして投票所に向かったというのが逆転劇を産んだ大きな要因で、よくある「最後まで諦めない!」がトランプ大統領を生み出したとすると、なんという悪夢のスポ根モノという感もある。

参考

東京国際映画祭チケット販売システム問題備忘録

2016年10月末に開催された「東京国際映画祭」のインターネットによるチケット販売が酷すぎる状況であった。システム開発での失敗事例と、翌年以降のチケット購入のために記録として書く。

時系列

時系列として、2016年10月15日の正午より映画祭のチケット販売(ネットおよび電話)がアナウンスされていた。

  • 10/15 12:00 チケット販売開始
  • 同直後 サーバーに接続できない、白画面が出る等の情報がTwitter等で広まる
  • 15:00過ぎごろからチケットがとれた等の情報が出回る
  • 10/16 15:00頃、運営よりシステム障害を伝えるメールあり
  • 同メールで代金決済されてもQRコードのチケットが送られていない場合は、「座席確保されていない」ことが伝えられる
  • 10/16 18:30頃、運営より再度メール
  • 同メールで座席確保できずにチケット代誤決済されてしまった人を対象に先行発売を行なう旨がアナウンス
  • 10/17 9:00頃、運営よりメール
  • 同メールで座席未確保分のチケット代金の返金と先行発売が再アナウンスされる
  • 10/17 23:00頃、運営よりメール
  • 同メールで
  • 10/18 12:00頃、運営よりメール
  • 同メールで先行発売用のURLとログインIDとパスワードが送られてくる
  • 10/19 12:00、先行チケットの発売開始
  • 同直後 サーバーに接続できない、白画面が出る
  • チケットへのアクセスをしている人たちに不安が広がる
  • 同日 深夜に、QRコードがついたチケットがメールにて配信が始まる
  • 同一座席の予約に複数のQRコードが送られてくる場合があった
  • 複数おくられても問題ないことがアナウンスされる

状況整理

  • 10/15での販売時に、座席指定後から決済(クレジットカードまたはコンビニ決済)への移行時に座席が確保されていないにも関わらず、決済画面に遷移して決済してしまった購入者が続出。
  • 10/15の販売時に、ユーザのリロード(再読み込み)処理により、この回数分のチケット代金の請求が行われたとの情報あり(12回クリックしたら12席分のクレジット決済が行われた)
  • 再販売時に、入金確認とチケット送付にタイムラグ。しかも同一チケットに複数回チケットメールが送付される例が散見された

サポート体制

  • 電話オペレータセンターは土日休み(土曜日に販売開始にも関わらず)
  • 騒ぎ後、電話につながらない状態が続く
  • 開催当日、劇場に当日対応受付が設置される

原因

設計書やコードを読んでいないため、あくまで推測。

  • 座席の状況を保持したデータベースがロックしっぱなしになった
  • 上記状況下でのアクセス時に、APIが「True」に類するものを返す
  • あるいは、データベースとの接続がないとAPIが「True」に類するものを返す
  • システムテストの不足(負荷テストはしていいないし、もしかしエラー系のテストもほとんどやっていないかもしれない)
  • アクセス予測の読み誤り

いずれにせよ、システムのコストをケチって、趣味で作ったレベルのシステムで販売してみたとうところか(あくまで推測だが)。金をそれなりに使ったのであれば、発注先と受注先と実装先がバラバラで意思疎通が全くできていなかったというところだろう。それにしてもお粗末と言わざるをえませんねぇ。

わずかな金をケチっただけで、それ以上の費用をつかってリカバリー(と顧客フォロー)が必要というのは、典型的な失敗事例だ。しかも恐らく最後は人力で座席データと入金をチェックしていたのだろう。映画祭みたいに一時的なシステムなら既存の販売システムに寄生するか、どこかのチケット販売会社に丸投げすればいいのではないか?とも思うのだが、それすらできないほどに予算がないのか。日本の映画館の売上はシンゴジラや君の名はのヒットで大幅増という話も聞くが、このお寒い状況こそが、私達の「クールジャパン」なのだ。

廃棄人間処理業者の黄昏

東海地方のローカル局である東海テレビが、9月28日の放送の『みんなのニュース One』で戸塚ヨットスクールでの合宿内容を放映した。この合宿はなんと「3~10歳」を対象としたもので、4歳児と5歳児に体罰を加える場面も放映している。Youtubeにアップロードされていたのでリンクを貼っておく。

https://youtu.be/VRl89rUR-TE

どういう内容かを書くのも不快だ。ヘイトウォッチングをお望みの奇特は方は、上記動画を見てもらえればいい。戸塚氏が本当に汚いやり口をするのだな、と思う点は、「嫌がる4歳児を海に投げ入れる」など、身体に外傷などが残らないような方法をとっているからだろう。恐らくは、傷害事件等で立件されないように工夫している。だてに、長年この方法でメシを食っているだけのことだけはある。

それにしても、どうして戸塚氏は、テレビカメラの前で幼児体罰の映像を撮らせたのだろうか?しかも、相変わらずニヤニヤしながら、見せつけるように、だ。この点について考察してみたい。

戸塚氏が悪目立ちを狙う理由

不思議な話である。なぜ、テレビの取材を受け入れたのだろうか?戸塚ヨットスクールの事件で、散々とマスコミから罵声を浴び、事あるごとにマスコミへの憎悪を示している。それにしてもマスコミを憎悪しているのであれば、取材者に対して、暴言を吐き、モノでも投げながら怒りでも示すようなものだ。

しかし、実際は違う。「マスコミが嫌い」といいながら、こわばった笑み(例のニヤニヤ顔)を浮かべながらテレビの前でコメントする。そして「体罰は必要」「体罰は教育」「体罰は相手の潜在能力を引き出す」等々の持論を展開する。

マスコミ嫌いを自称する人物がマスコミの前でニコヤカに話す理由は簡単だ。自分のビジネスの宣伝になるからだ。戸塚氏が「体罰は善」と称し、幼児を海に放り出すような醜悪な画像を放送されれば、99.9%の人間は不快になる。しかし、手の掛かる幼児の躾を放棄したいと願っている0.1%の親にメッセージがとどけば、戸塚氏はOKなのである。彼にとって99.9%の人間からの批難は織り込み済みで、屁でもないと思っている。戸塚氏を「産業廃棄物処理業者」と呼んだ人がいたが、要するに、その通りなのだ。

マスコミの対応

今回の件でもうひとつわかったのは、様々な子供の虐待やイジメに関する事件があるたびに、マスコミは戸塚氏のところにコメントを取りに行っていることだ。なぜ、体罰肯定の人物にコメントを求めるニーズが発生するのか?体罰を否定する論調だけで番組や記事を構成すれば、単調になり面白味にかけるが、体罰肯定のコメントを入れることで構成が立体的になり深みがでる・・・とそういう風に考えているからだ。

ところが、体罰肯定派という人間はなかなかいない。心の奥底では体罰を肯定しているような御仁でも、それをマスコミの前で開陳すれば、社会的地位を失いかねない。

その点、戸塚氏は無敵だ。体罰でビジネスをしているわけだから、カメラの前で体罰肯定論をぶち上げてもなんら損失にならない。それどころか、体罰肯定メッセージを発することで自分のビジネスの宣伝にもなる。だから何らか事件(イジメや体罰)があれば、俺のところにコメント取りに来いとまでいう。さんざん、マスコミに叩かれたことに恨みを抱いているにも関わらず、だ。

かくして、「体罰肯定のコメントを取りやすい」という理由で、氏のところにマスコミは向かう。それどころか過去の記事の中には、戸塚氏の自己肯定理論に影響を受け、「『いかなる体罰・暴力も厳禁』という風潮は再考せよ」と、「盗人にも三分の理」のような論調まで発生することになる。ディレクター的には、「議論に深みが加わる」とかなんとかということなのだろう。

教育を放棄する親

金を使ってでも子供の教育を放棄したい親がいる。百歩譲って、家庭内暴力や非行で疲労困憊した上で、戸塚ヨットスクールへ子供を預けるというのであれば、まだ解らなくもない。しかし3歳、4歳という幼児を、短期とはいえ、体罰が加えられると分かっているところに預けるというのはどういう神経なんだろう。

3歳、4歳というのは、極めて不合理な理由で癇癪を起こすし、親のいうことを聞かないということもあるだろう。それが、この年頃の子供の仕事だといってもいい。親からすれば、戸塚の所に一度預けることが楽なのだ。子供のわがままに付き合わなくてもいいし、自分の。その後、子供が駄々をこねたら「また、戸塚ヨットスクールへ入れるぞ!」といえば、その恐怖から直ぐに従順になることだろう。しかし、このような目先の楽さを手に入れても、後々、子供との関係がどのようなものになるか分かったものではないぞ・・・といったところで、この手の親は聞く耳持たぬのだろうな。

まとめ

要するに、体罰ビジネスを展開している戸塚氏と、教育放棄したい親と、マスコミが互いに共栄関係にあるということだ。その被害者は、このような親に、このような社会のもとに生まれ育った子供たちということだ。幼児だろうが青年期だろうが、受けた暴力は忘れることはない。児童虐待が連鎖するというのは、様々な調査で明らかになっているわけで、これは将来に禍根を残すことになる。

戸塚氏がああなのは、もう矯正しようがない。これから仮に刑務所に入ったところで、あらゆる事柄について自説を強化するだけだろう。

マスコミ各位には、とことん戸塚氏を無視することを切望する。でも、無理だろうな。「理想論では世の中回らない」と思っている人が大部分であるし、なにより「人間は変わらない」のだから。そして、戸塚氏は、そのことを証明してみせている。