無知と無能の間に

無知無能者、固人之所不免也

漆黒と灯火

やまもといちろう氏に関して調べていたら、氏が高額会費徴収の信者ビジネスをやっていることが分かった。「漆黒と灯火」という詩的な名前が冠せられており、会費32,400円/1ヶ月(消費税込み)で、会員10人限定なのだそうだ(2017年度)。10人集まって、1年運営できれば360万円の売り上げがたつのだろうが、実態はどうなんでしょう?第5期だというので、4年間は続いているようではあるが。「総会屋2.0」と呼ばれる氏にとっては会費収入もさることながら、会員の皆さんにゴミ箱あさりをさせて得られる情報があればめっけもんというところなのかもしれない。

やまもといちろう氏は阿佐ヶ谷ロフトAなんかで開催されているトークイベントにやたらと出演しているのだが、それにしても、投資で100億円を稼いだと勝ち誇っている人間のやる仕事なんですかね?

やまもといちろうとは何者なのか?

やまもといちろうの謎の能年玲奈問題への介入

さて町山智浩氏が「MXテレビに圧力があり能年玲奈が出演キャンセルとなった」ということに関して、切り込み隊長を自称するやまもといちろう氏が突然町山氏に発言を取り消せといってきたのが去年の暮れ。詳しくは以下のリンク先を読んでいただきたい。

経歴詐称疑惑

やまもといちろう氏に関しては、知っている人は知っているが、大ボラ吹きという話がネット民で話の種になっていた。ところが、なにがどうなるか分からないものだが、やまもといちろう氏はNHKに出演したり、氏がライブドアの買収で裏で動いていたと話をしていたフジテレビで「あの」ショーンKと入れ替わるように「とくダネ!」のレギュラーコメンテーターとかに収まっていたりするのだから分からないものだ。

DMMのはちま起稿買収問題

さて昨年の押し詰まった12月27日にYahooのトップに「DMMのはちま起稿買収問題」についてYahoo個人オーサーでもあらせられるやまもといちろう氏とDMMの社長のインタビュー記事が掲載された。ま、限りなくブラックにちかいDMMが火消しに使ったのはいつものことだ。やまもといちろう氏はDMMの社長との対談を引き受けるなど、DMMから仕事を時たま請け負っていることがうかがえる。それに近い人物の記事をしかもDMMの肩をもつ内容でYahooのトップにもってきた力というのは何なのだろう?闇の真実を知りたくなった。

やまもといちろう氏の経歴詐称は問題である。が、「ゲーム好き」「ステマ批判」を繰り返していた氏が、はちま起稿のDMM買収で擁護を行ったこの一点だけでも万死に値する。

ポスト・トゥルース

さて2016年は、トランプ大統領誕生、イギリスのEU離脱と思わぬ年となった。さて、イギリスのオックスフォード辞書が選んだ2016年を表す世界の言葉に「Post Truth」が選ばれた。

Post Truth

Post Truthとは、オックスフォード辞書によると以下の意味となる。

客観的事実よりも感情的な訴えかけのほうが世論形成に大きく影響する状況を示す形容詞。

2016年の流行語としていずれ忘れさられる消耗品として言葉ではなく、歴史に残る言葉になるだろう。トランプ現象は象徴的なできことであるが、自分にとって都合の悪い事を徹底的に無視し、自分の都合の良いものだけを主張する輩でネット上は満員御礼だ。

Post Truthとはインターネットの産物なのか?

ここは明確に「No」と言っておく。もともと人間とはそういう存在なのである。人間とは信仰する動物であり、常に自分に都合のいいもの「信じて」安心を得る動物なのだ。単に、インターネットによって可視化されたにすぎない。いやインターネットを持ちださなくても、単に第二次世界大戦の教訓が消えつつあるだけななのかもしれない。

確かにインターネットによって生み出された新しいメディアツールは、世の中を正確に映し出す鏡ではなく、白雪姫にでてくる「鏡よ鏡、世界で一番美しいのは誰?」と聴けば、「もちろん、貴方です」と答えるものであった。ネットで、互いを理解しあう議論は生まれず、自分の都合のいい情報だけ悦に入り、都合の悪い情報を徹底的に叩いたり、無視したり、削除したり、デマをつくり拡散したりというのが繰り返されている。

政治的なことばかりではない。ネットショッピングも週末旅行の計画も、ネットで検索すれば、いままでの自分の検索履歴から推定される「おすすめ情報」が表示されるだけだ。ネットショッピングで、あたかも自分が選びとったように錯覚しているが、実際にはアルゴリズムの手のひらで踊っているに過ぎないのではないのか。

では、インターネット前はそうではなかったか?違う。人間とは昔から、自分の都合のいい情報だけを信じていた。自分の都合の良い情報がでてくるまで、それ以外の情報は無視する。まるでトランプゲームで自分の都合の良いカードを引くまで何度も何度もカードを引くことを繰り返すように。要するに人間というものはそういう動物なのだ。

参考

キュレーションサイト騒動の照らす道筋、その2〜シリアルアントレプレナーという連中

年末ジャンボ宝くじの売り場に行列ができる今日このごろ、いかがお過ごしでしょうか。

宝くじ売り場にたむろしている連中を横目で見ながら「社会の底辺は本当に馬鹿だな。確率でいえば、毎日宝くじを買って一等が当たるより、毎日飛行機に乗って飛行機が墜落してしまう方が遥かに高いのに、それすら理解できない可哀想な連中だ」といっていたのは、ある起業家だ。ま、私も宝くじ売り場の風景を見て同じようなことを思わない訳ではないが、論点がずれるので話を主題に移す。

さて、村田マリという人物が物議を醸している。キュレーションサイト騒動で、閉鎖に巻き込まれた「iemo」をDeNAに売却した人物だ。サービス開始から9ヶ月で売却し、約15億円を手に入れたとされる。そして、彼女は在シンガポールであるため、含み益がある株式を保有したまま日本国外にいるので、売却には日本での課税がなかったといわれる。

村田マリという人物は、シリアルアントレプレナーと呼ばれてもいる。直訳すると連続起業家というところで、会社を作っては、それを高く他に売るのを繰り返している連中だ。ユニコーンだとか、スピード感とか、エグジット戦略だとか、キラキラワードが口をついてでてくるが、頭の中はどこから金を引っ張ってきて、どこに高く売り払うかを考えているだけだ。と、批判したところで、金は彼らのところに集まってくる。彼らの計算通りに。

何度かこの階層の連中の講演を聞いたことがある。あるシリアルアントレプレナーがある有名大学の起業家育成セミナーに潜入して、聞いた内容でわすれられないことがあった。

そのセミナーある学生が「起業に興味があるのですが、一度企業に就職した方がいいのか、大学でていきなり起業した方がいいのか迷ってます。どちらがいいと思いますか?」と質問した。すると講師は間髪入れず「起業家になりたければ、すぐに起業家の世界に入ったほうが良い。就職すると『人に使われる』ことに慣れて、起業家としてはダメになる。起業には金集めの方法と人を使うスキルが必要で、若いうちに起業家の世界に飛び込んで身につけた方がいい」という答え方をしていた。要するにケチ臭いサラリーマンと起業家たちの世界には大きな溝があり、そこでの選択の後には、容易に飛び越えられないゾ、ということを言っていたわけだ。

パワポ資料1つで、数億円単位で金を集めて、その10倍で売却する階層と、そいつらの作ったサイトで月に数十〜数百万レベルで稼ぐ階層と、そして、そいつらが用意したパクリ記事を並べたキュレーションサイトを暇つぶしに眺めながら宝くじの売り場の行列に並ぶ階層がいる。そしてそれらの階層は、自分の下にいる階層の連中を影で「馬鹿」「貧乏人」呼ばわりしながらも利用して、自分たちの領域の中で金を回している。そこに分かりやすい貧困はない。しかし絶望的な分断であり、これが今の格差社会なのだ。

あの連中が金を右から左に流すことだけしか考えていなくて(実際、それしか考えていない)、社会の悪だと叩くことは簡単だ。今回の村田女史がどうなるかはわからない。すでに魔女狩り前夜の様相になっている。しかし、いい子ちゃんのセリフを吐かせてもらえれば、魔女狩りをしたところで我ら貧民層の鬱積を晴らす娯楽として消費してしまうだけでは、トランプ現象とおんなじであり、結局は自分の首を締める結果にもなりかねない。

もっと怖いのは、自分より下の階層は見えている気になっているが、自分の上の階層を認識できていないことだ。そして理解しているつもりの下の階層から、上が美味いことやっている姿が見えてしまったときに強烈なカウンターがやってくるということかもしれない。

キュレーションサイト騒動の照らす道筋、その1〜語られなかったパクリツール問題

感想:本当に賢い奴というものはいるものだ。

これまでの流れ

もともともは医療系のキュレーションサイトに似非科学にもなっていない情報(肩こりの原因は悪霊みたいなもの)の指摘からはじまったものだが、いままで燻っていたキュレーションサイトが外部情報を丸パクリする実態が世間一般にしられることになり、一番の槍玉にあがったDeNAがすべてのサイトを閉鎖。経営陣が謝罪会見するに追い込まれた。DeNAの他にも、サイバーエージェントリクルートも運営していたキュレーションメディアの閉鎖や見直しを表明した。

キュレーションサイトの運営

  1. テーマにそったキュレーションサイトを立ち上げ、記事を外部より募集する
  2. 外部記事を 「2000文字1000円」で買い取る
  3. まとまった記事をあつめ、さらにSEOテクニックを駆使して検索エンジンで上位にくるようにする
  4. 検索からのクリックによる広告収入を収益とする

「2000文字1000円」というのは、大手の出版社の原稿料の1/50〜1/100程度といわれている。

安い単価の背景

このような単価では取材して文章を起こすというような作業はペイできない。DeNAの会見でも単価の安さを指摘していたが、それは運営側も理解していたはずである。会見では曖昧な回答をしていた。要するに運営元が入稿する外部ライターが記事パクリの実態を知っていたかどうかは、もっと突っ込むべきポイントであった。

記者会見で 「2000文字1000円」という安価でライターを酷使していたという指摘をされていたが、既存メディア側の記者の方も思い込みがあった。このキュレーションサイトの記事はまともなライターがタイピングすらしていない。なんども指摘するが 「2000文字1000円」ではまともな執筆作業(取材、起稿、修正などなど)は割に合わないわけで、運営側がそれを知らないというのは無理筋というものだ。入稿される記事がパクリやコピペから作られたものであるという認識があったのは、明らかだろう。

いろいろ事情に詳しい知人にいわせると、人力ですべて書いていたといえば、違うようだ。「リライトツール」というものがある。要するにパクリツール。これは、記事にしたいキーワードをいくつか入力すると、ネット上をクロールしてブログやSNS等から、まとまった文章を引っ張ってくる。WEBページをスクレイピングする方法から、最近のブログサイトやSNSではAPIも用意されているので、それを利用して、大量に元ネタになる記事引っ張ってくる。そして検索エンジンの上位にくるように文章を再構成(キーワードを何度も繰り返す配置にするetc)までを自動的に行うものだ。

この手のリライトツール(パクリツール)を使うと1時間で2000字前後の記事を10〜100程度、作ることは可能なようである。先のクソ安い単価にも関わらず、このツールを使ってパクリ記事を乱造したうえでキュレーションメディアに入稿すれば、1時間あたり10,000円〜100,000円の収入が得られるという計算になる。ということは、数台のPCを活用すれば、台数分を乗じた額になる。実態として、キュレーションメディアに入稿していたライターの過半は、IT系エンジニアがサイドビジネス感覚で、このリライトツールを駆使して泡銭を稼いでいたということだ。とある人物は月に100万円に近い額を稼ぎだしたとも聞く。ま、この手の話は膨らむ傾向があるので、話半分に聞いておいたほうが良い。

専業アフィリエイターとよばれる、どちらかといえばキュレーションメディアにパクられた側の連中(こいつらもリライトツールを駆使していたわけだが)がこれに憤慨して批判記事を書き飛ばし、ネットライターもその批判に同調し、一方で、大手の伝統的な出版メディアの記者はこの手のツールの存在すら知らず、ライターの労働哀歌みたいな主張をしていた点に、社会の絶望的な分断を見た気がする。

ではこれからどうなるのか?

識者の中には「これでWEB系メディアも記事のチェックや著作権の配慮など、既存メディアと同様のモラルが求められる方向に進むようになるだろう」とコメントしていた者がいた。しかし、それは本当だろうか?希望的観測に過ぎないのではないか?

恐らく、キュレーションサイト方式は、さらに黒い方向に進化することだろう。少なくても人間の介在をほとんど必要としないビジネスモデルで泡銭が稼げることを証明し、このような方法があることを広く知らしめてしまったからだ。

まず、検索エンジン側のGoogle様含めて、ITメディアの人々は徹底的な自動化推進論者であり、人を介した内容チェックなど話にならないと根底で思っている。

またパクリツールはさらに進化していく。現状では丸パクリでしかないわけだが、ディープラーニングが取り入れられるようになるだろう。もっともディープラーニングも元データを大量に読ませ込むというのは変わらない訳だが、まともな文章が吐き出されるようになるのはもうすぐだ。そのようなツールが出回れば、もうパクリなのか機械学習の効果なのか、人間にはわからないような文章を吐き出すことになるだろう。

しかも機械が大量に出力される文章は、やはり自動化された機械によりモラルチェックがなされるようになる。ディープラーニングについては思うところがあり、まとまれば別記事で書き飛ばしておきたい。機械化された情報を大量に収集して、機械がさらに再構成した情報を吐き出すようになる。これがGarbage in Garbage outになるのかどうかは注目していきたいし、この人工知能の問題は別記事で、時間があったら書きとめたい。

そして、既存メディアとIT系には深い断絶があった。既存メディアにはあるていど読める記事にするには、取材費やら調査費やらが必要で、それらを込みで高い原稿料を支払っていた。それが既存メディアの不文律でありモラルハザードでもあった。ところが、ITメディア系はそんなことはまったく考慮の外でひたすら安い単価で仕入れることが目標達成への道であった。この断絶こそが、DeNAの謝罪会見のなにやらお互いの姿を掴み損ねている光景として現れたということなのだろう。

いやはや、21世紀っぽくなってきましたな。上記予想が当たるかどうかはわからない。しかし、100%人力でブログを書くという行為は絶滅危惧種に指定された馬鹿のやること・・・になるのも、もう少し先の未来なのかもしれない。

2016年アメリカ大統領選挙まとめ、その4〜ネット民主主義の行き着く先はポピュリズムなのか?

結局、2017年以後、トランプ大統領が誕生した後に何が起きるのか?

トランプの一番の問題点は何か?

町山智浩氏が指摘していることだが、トランプという人物は共和党の大統領選に出たことのあるパット・ブキャナンが人種差別発言をしたときに「そんな発言すべきではない」とたしなめた。フォックスニュースのトランプ氏へのディベートでも「過去に人工中絶も賛成だったし、同性婚容認であったし、ビル・クリントン政権も支持していた」と指摘されていた。

要するに、トランプという人はポリシーがまったくないということだ。どういう国にするかという理想をもっていない。アメリカの軍事拡張も、メキシコとの壁を築くという発言も、イスラムへの差別発言も、「選挙のためのセールストーク。言ってみただけ」ということだ。つまり、トランプという人物は「アメリカをこういう国家にしたい」という理想は無い。だから前言を覆すというのは、なんの躊躇もなくやることができる。

かっこ良く言えば「予測不能」ということだ。たぶん「最終的には、金で転ぶ人」なのだ。「その手の平いつ返したんだ?」というくらい180度の方針転換は平気でやる。しかも感情的になりやすい。だからロシアや中国はトランプ氏を歓迎しているのだろう。「こいつを転がすのは簡単なことだ」と。

人間は、良くないことが起きた時に、「いやいや状況は案外よいかも」と根拠の薄い楽観論に傾くように遺伝子が設計されている(自己防衛バイアス)。トランプまとも論を見聞きするにつれ、人間というのは頭が良いと思うような人物でも、根本的にこのバイアスを制御できないものだなというのが分かっただけだった。

まさか?

  • 懸念その1

トランプ氏の政策をマジでやろうとすると、公共事業拡大による財政出動と大規模減税による歳入減が同時に起きるわけで、アメリカの財政赤字は拡大する。とすると手っ取り早いのはアメリカ国債のデフォルト(不払い)なわけだ。そして一番悲惨な状況になるのはアメリカ国債を大量に保有している日本と中国なわけだ。まさか?

  • 懸念その2

核のボタンを押してみる。まさか?

政治は?

2017年は、フランス大統領選挙があり、極右国民戦線のルペン女史が選ばれる可能性がある。オランダも総選挙があり、EU離脱派が勝利するかもしれない。EUはフランスが抜ければ、実質崩壊ということになるだろう。通貨と経済と安全保障の統合だけ残すという方法も、あるかもしれないが、いずれにせよ揉める。緩やかな連合を目指す形もあるかもしれないが、壊れる時間に比して再構築には時間がかかる。

日本は、もちろん憲法から人権を削除し、戦前の価値観に回帰したいと願い岸信介を神聖視している我らが安倍ちゃんだ。ポピュリズムに関しては、世界が日本に追い付いてきたという感もある。「都民ファースト」とか寝言をいっている現代に現れた東京の「淀君」に関しては、別記事で茶化しておきたい。

経済は?

アメリカは政策金利を上げる方針を確認した。EUは来年のフランスとオランダの選挙も見据えて、資金を引き揚げる動きがでるかもしれない。となると、トランプ氏が正式に大統領の座につくまではドル高傾向が顕著になるだろう。ただ、トランプ氏は海外生産を国内に戻して国内のブルーカラーに仕事を与えるというのは、「いまのところ」は一貫しているわkで、基本的にはドル安論者と思われる。恐らくは行き過ぎたドル安(とトランプが考えれば)、中国元や日本円に対して切り上げ圧力を売ってくるかもしれない。目論見通りであれば、来年前半は、為替が大きく乱高下するかもしれない(外れても知らない)。

結論

要するに先が読めない。

トランプ氏を支持している人達も根っから右翼思考というわけではなく、ラストベルトの人達は4年前にオバマ氏を支持し、しかも今現在もオバマ氏を支持している人たちが、トランプ氏に投票するということが起きた。雑多な集合で思想的な左右を超えて、目の前の不満からトランプを支持したわけで、まったく理念の無いトランプが大統領に選ばれるというのは、ディストピア小説そのものだ。

2016年は、ソ連崩壊から四半世紀の25年が経過し、勝利したはずの資本主義陣営の中にが新自由主義グローバル化に反発する勢力がいよいよ先進国とよばれる地域にも侵食した。ソ連の存在とソ連との対立は、核戦争という「わかりやすい世界の終末」を提示していたが、ソ連の崩壊で、世界の見方が良くわからなくなった。反グローバル化というものも、結局のところ「『反アメリカ連合』『反新自由主義』『反エスタブリッシュメント』とう名のグローバル化(寄り合い所帯)」ということだったわけで、グローバル化で不利益を被ったと思っている人々の被害妄想をどう解決するのか(解決しないのか、できないのか)という問題なのかもしれない。

2016年アメリカ大統領選挙総括、その3〜Trumpに投票した白人層とは?

オバマ大統領はこのラストベルトと呼ばれる地域での獲得票数を積むことで激戦週とよばれるこの地域を制して、大統領の座についた。ところが、民主党支持層である労働組合がもともと強いこの地域で、軒並みクリントン氏は得票数を落とした。結果、トランプ氏がこのラストベルトで選挙人を獲得して、逆転勝利を手にした。

2016年10月のアメリカの全国平均の失業率は4.9%だった。ラストベルトのペンシルバニア州は5.7%、イリノイ州5.5%と全米平均を上回っていた。そして、このラストベルトの失業対策を熱心に取り組んだのは、オバマ大統領である。この労働組合の強いこの地域の工場には、オバマ大統領の肖像を掲げてあるところが数多くあるという。

アメリカ中年白人の死亡率

2015年にノーベル経済学賞を受賞したプリンストン大学のアンガス・ディートンとケースの共著論文「21世紀の非ヒスパニックの白人中年男性の疾病率と死亡率の上昇」が注目を浴びた。

この論文の中で、まず10万人あたりの45〜54歳の死亡率が1990年から2010年までどのように変化したかが示された。以下に、そのグラフ。

f:id:projectdprompt:20161227174518p:plain 出典: Anne Case, Angus Deaton "Rising morbidity and mortality in midlife among white non-Hispanic Americans in the 21st century"

非ヒスパニックの白人アメリカ男性だけ、死亡率がやや上昇していることを示した(図中のUSW)。ヒスパニック系アメリカ白人男性を含めフランス、ドイツなどでの死亡率は劇的に減少しているのにもかかわらずである。そして非ヒスパニックの白人アメリカ男性の死亡率を上げている死因についてが、次のグラフである。

f:id:projectdprompt:20161227174500p:plain 出典: Anne Case, Angus Deaton "Rising morbidity and mortality in midlife among white non-Hispanic Americans in the 21st century"

肺がんによる死亡を抜いて、急増している「薬物中毒死」が1位、「自殺」も増加して3位。4位の慢性肝疾患も増加している(アルコールの過剰摂取が原因だろう)。この3つが非ヒスパニックの白人アメリカ男性だけ死亡率を押し上げている要因なわけで、要するに、うだつのあがらない生活に嫌気がさして、酒やドラッグに溺れ、自殺を選んでいるという状況を表している。

このグラフにはでてこないが、アメリカの同年齢層の黒人男性の死亡率は、白人のそれよりも高い。ただし、こちらは減少傾向を示している。そして同年齢層の白人中年女性も死亡率が減っておらず、45〜54歳の年齢層の死亡率の上昇傾向は「男女の高卒以下の学歴の白人男性と女性」のみにみられたとしている。

先進国の中間層は消えるのか?

アメリカの大学進学率は74%(日本は51%、OECD加盟国平均は62%)で、アメリカ白人の高卒層というのは時間が経過すれば駆逐される存在なわけだ。4年後、8年後には確実にトランプを支持した高卒白人ブルーカーラーは減っていく。

グローバリズムで安い賃金で働く途上国に仕事を奪われる中間層、あるいはマジョリティーであったブルーカラー層が、段々と所得を奪われているという、漠然とした恐怖を抱いいているということだ。で、先進国の仕事を奪った方である、途上国では、その繁栄から取り残された人達が先進国から押し付けられた(と理解している)市場主義やグローバリズムに対する反発がおき、左翼的な政党や政策への支持をする。一方、仕事を奪われる方の先進国の置き去りにされた人達が右翼的、排他的な言説になびくというのは、どういうことだろう。誰か分析してくれないだろうか。

参考