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無知と無能の間に

無知無能者、固人之所不免也

青年海外協力隊、隊員の生態〜その8〜外部報告書はどう分析しているのか

これまで、ブログから協力隊の隊員像をあぶり出そうと試みた。ただ隊員がどの程度の比率でブログを書いているのかそもそもわからない。検索で引っかかる数から言って少数派であることは予想できるが。であれば、JICAでもなく協力隊員でもない、第三者視点のレポートではどのように隊員を語っているか見てみることにする。

協力隊事業の目的

JICAは、協力隊事業の目的は、以下の3つであると説明している。

  1. 開発途上国の経済・社会の発展、復興への寄与
  2. 友好親善・相互理解の深化
  3. 国際的視野のかん養とボランティア経験の社会還元

報告書「国際協力における海外ボランティア活動の有効性の検証」を読む

青年海外協力協会(JOCA)の受託調査としてまとめられた表題の報告書がWEB上で公開されていた(PDF)。2009年発行と若干古いが、これをベースに協力隊員がどのような動機付けで参加しているのか見て行きたい。まず一番気になった部分を引用する。

『21 世紀の JICA ボランティア事業のあり方』が主張するように、ボランティア事業の目的として、近年では、「開発途上国の経済的・社会的発展への貢献」がもっぱら強調され、青年海外協力隊事業発足当時標榜されていた「人材(青年)育成」は「副次化」する方向にある[国際協力事業団青年海外協力隊事務局 2002:87-89]。だが、個々のボランティアの意識のレベルでは、ボランティア活動を第一義的に自らの経験の獲得・スキルアップの場とする考えが支配的であった。たとえば、ガーナの隊員を例に取ると、「留学よりも人に役立つことがしたかった」「知らない世界で知らない経験がしたかった」「協力隊の制度を活用すれば個人ではできないことができると思った」「現地の組織で働くことによって開発問題の本質を理解できると考えた」「日本で紹介されている途上国の現状と現実のギャップを自分の目で確かめたかった」「協力隊参加を人生の転機としたい」など、参加の目的を「人のために」というよりも「自分のために」とする隊員が圧倒的に多かった。

―――「国際協力における海外ボランティア活動の有効性の検証」P.41

報告書のポイントを列挙する。

  • JICAは協力隊事業に3つの目的を挙げているが「開発途上国の経済的・社会的発展への貢献」を強調している
  • 協力隊での人材育成は主目的ではなくなってきている(即戦力を求めるということ)
  • 協力隊員の参加目的は「自己実現

話がそれるが、JICAの外郭団体であるJOCAが資金提供して実施した調査書だ。しかし、アンケート回答などの定量的計測が行われていないのは、なぜなのか。JOCAは指摘もレビューもしなかったということか。JOCAにとっては、アリバイとしての調査書という位置付けなのか。

それはさておき、「自分のために」とする隊員が圧倒的に多いと、報告書で指摘している。要するに隊員の参加動機は「自己実現のための協力隊参加」だということだ。

では、この傾向はいつからあるものなのか。

参加動機は「自己実現

げんに、志望者の多くはその動機を聴かれて

「自分を試してみたい」

という答え方をする。

―――伴正一「ボランティアスピリット」P.30-31

「自分を試す」と「自己実現」の間には落差がある。伴正一の「ボランティアスピリット」の初版は1978年となっている。この落差は40年近くの間に徐々に生まれたものなのか。それとも方便の一つで「自己実現」を協力隊受験用に「自分を試してみたい」と述べていただけで、本質は変化していないのか。ここからは、定量で定点観測が行われた資料がないため読み取ることはできない。

しかし、一つだけ明言できるのは、「「自分を試す」と「自己実現」にある落差を放置し、「自己実現」を参加動機とした協力隊募集をつづけているのは、JICAである」ということだ。そして、JICAおよびJOCAは、組織防衛が主目的であるため、放置し続けていたといってもいい。そして、これからも放置しつづけるのだろう。