政治の道具としての青年海外協力隊〜その4〜外務省の野望
安倍政権の都合の良い道具
安倍首相が東京オリンピックの誘致プレゼンテーション。あの「フクシマは統制されている」と言って物議をかもした、あれだ。このスピーチでは、協力隊制度に関すると思われる内容がある。
オリンピックの遺産とは、建築物ばかりをいうのではない。国家を挙げて推進した、あれこれのプロジェクトのことだけいうのでもなくて、それは、グローバルなビジョンをもつことだ、そして、人間への投資をすることだと、オリンピックの精神は私たちに教えました。
だからこそ、その翌年です。日本は、ボランティアの組織を拵えました。広く、遠くへと、スポーツのメッセージを送り届ける仕事に乗り出したのです。
以来、3000人にも及ぶ日本の若者が、スポーツのインストラクターとして働きます。赴任した先の国は、80を超える数に上ります。
働きを通じ、100万を超す人々の、心の琴線に触れたのです。
(中略)
我々が実施しようとしている「スポーツ・フォー・トゥモロー」という新しいプランのもと、日本の若者は、もっとたくさん、世界へ出て行くからです。
学校をつくる手助けをするでしょう。スポーツの道具を、提供するでしょう。体育のカリキュラムを、生み出すお手伝いをすることでしょう。
やがて、オリンピックの聖火が2020年に東京へやってくるころまでには、彼らはスポーツの悦びを、100を超す国々で、1000万になんなんとする人々へ、直接届けているはずなのです。
JICAの得た見返り
これは青年海外協力隊事業のことを指している。誰が知恵をつけたのか。邪推になるが、スピーチは外務省関係の誰かが起草したものなのだろう。注目すべき点、「日本の若者は、もっとたくさん、世界へ出て行く」という文言を入れて、きっちり予算増額の口実を入れている。
実際、協力隊員の派遣前訓練の期間「65日」を、2013年度から「70日」に戻している。また2013年に帰国した協力隊員には事後研修なるものを2泊3日で実施している。あまりにも、あからさまだ。
また安倍首相は就任以来、外国訪問の数が多い。2013年は13回、2014年は14回になる。当然であるが、この訪問にはJICA関係者が随行員として付いて行っている。昭恵夫人が青年海外協力隊員の活動先を訪問することもあるようだ。イメージ戦略といえばそれまでだが、政権への接近は何を意味しているのか。
終戦後まもなく、日本人の海外移民を積極的に支援したのは安倍晋三の祖父の岸信介だ。なぜ、ボリビアに興味を持ったのかというと、岸信介は日本ボリビア協会の初代会長で、ボリビア移民を推進した経歴があることを知ったからだ。3代先に新たな蜜月関係を築いているというのは、とても興味深い現象である。
JICAは外務省の道具であり、JICA存在目的は組織維持(=事業維持)だ。JICAは、外務省の忠犬であって、国庫にたかる外郭団体の一つだ。だから予算措置が確保できれば、JICAとしては、OKなのだろう。それはそれで問題なのだが、注目すべきは、外務省が、安倍政権を使って何をしようとしているのかだ。国連の常任理事国入りか、はたまた別にあるのか、そもそも、そんな野望もないのか。いずれにせよ、外務省は「省益あって、国益なし」であるが、一部の官僚の出世競争に使われているということだろう。