セルフブランディングの行き着いた先
テレビに出ようという人間は注意深く観察する必要がある。特に「情熱大陸」のようなドキュメンタリータッチで人を持ち上げようとするような種の番組に出る輩は。
さて、「安藤美冬」なる人物だ。ネタはいくらでもあるが、簡単にまとめると、
- 2012年の春、フリーランスで働く女性の今後のあり方として「情熱大陸」に出演
- これからは組織を飛び出し、ノマド(フリーランス)として生きるのが大切
- ノマドとして生きていくためにはセルフブランディングが大切
- 例えば、クリエイティブを自称する人は、住所を足立区にしてはいけない
- スターバックスはノマドの劇場
- フリーランスとしてワンアンドオンリーのポジションをつくる
- キャリアの長期計画は持たない
- 「安藤美冬サバイバルキット」(毎月5000円)なる安藤美冬がセレクトしたものが毎月届けられる商売をノマドを対象にじめる
- その他もろもろネタを提供
といったとこか。目眩がしそうだ。当然、物議を醸しだし、「ノマド=新しい失業者のあり方=新貧困層」を宣伝するための陰謀が働いているという話もあった。マルチ商法への加担なんて話もあったが、そこは本題ではないので、目をつぶろう。
さて、そのような陰謀論が事実かどうかはわからないが、そのような陰謀論が囁かれるほど、彼女の言葉に中身がなく、薄っぺらいものだったということだ。彼女の言葉は、どうかんがえてもある種の自己啓発本の寄せ集めで、それを深く分析したり思考したりした形跡はない。そもそもノマドという言葉自体も彼女が作り出した言葉ではなく、人の作ったムーブメントに乗っかったにしか過ぎない。彼女をブランディングした人間がどのような人物なのかの方が興味がある。
さて、このような輝かしいノマドとしての先駆者である安藤美冬であるが、2014年に多摩大学経営情報学部専任講師になる(常勤、任期なし)と発表。驚くべきか、嗚呼。大学の講師は、ノマドに近い組織人ではあるが。「これからは組織にとらわれない働き方が大事」というが、結局は「安定」を取ったということか。単にノマドが消費しつくされ、ブランディング対象としての安藤美冬を維持するためには、渡りに船といったところか。
であるから授業を受ける学生諸君には、極力この講師の単位は選択せず、必須科目で逃げられない場合においては「徹底的に質問攻め」にし、一つ一つの言葉の無意味さを「反面教師」として学び取って欲しいと切に願う。