無知と無能の間に

無知無能者、固人之所不免也

セルフブランディングの行き着いた先(2)

安藤美冬女史の記事がでていた。

旅で文章を書いて、それをビジネスにしているのだそうだ。なるほどね。協力隊のブログを散々読んだ身から見ると、「旅に普段見聞きすることのないことを文章にすれば、簡単に耳目を集めることができる」というビジネスモデルと見える。要するに中身の無い人間が耳目を集める文章を書くときによくやる手法だ。「旅」とか「旅好き」みたいな人物の自己陶酔文章は、よくよく注意しなければならない。可能な限り読まない、避けることだ。

ドローン恫喝

恫喝するドローン業者

最近、ドローンについて、ネットで調べていた。ドローンによる空撮を請け負っている業者の以下のサイトに遭遇した。

いや、詳しくは書かれている。しかし、読み進めていくにつれ、考えてしまった。以下のリンク先は、その象徴的なページだ。

はじめにとして「この事故原因を断片的な情報から推測します」だそうだ。事故を客観的に分析することが、主眼ではない。断片的な推測に意味がないとは言わないが、あえてそれを行うというのが、この空撮業者を象徴している。

この中で、ある事故を引いて以下のような書き方がなされている。

岐阜県大垣市にて、伐採の見学に参加していた小学生が、長さ3m・重さ5kgの枝の落下で亡くなっています。これをマルチコプターの落下に当てはめれば、答えは直ぐに出ます。プロペラガードなどを用いても重量機なら死亡事故に至ることは、この事故からもわかります。軽さは絶対的な正義です。

「軽さは絶対的な正義」とあるが、明らかに間違っている。極論だが鉄砲の弾はドローンより1/100も軽量だが、殺傷能力がある。余談だが、フランスのドローン規制はこの辺りをエレガントに定義している。けれども、恐らく、この業者ゼロというサイトでは、紹介されることはないだろう。

さらに、

今後も、技術の伴わない必要の無い大型機は0 [Zero]の攻撃対象となります。覚悟して下さい。

すごい。公権力でもない、ただのドローン業者が同業叩きを表明して憚らない。

これ以外でも、「太陽風の電磁ノイズ」でドローンが墜落するとか、もう目も当てられない。太陽風の影響でドローンが大量に墜落するような事態が発生するのであれば、もっと憂慮すべきことがらで世の中は埋め尽くされて大騒ぎになるだろう。でも、そうは考えていないようだ。

ここまで、これからドローンを広く活用しようというドローン業者がドローンの危険性をこれでもかと表現するのは、どういうことか。いったい何に怯えているのか。

「怯え」の原因

ではこれらの恫喝はどこに向けて書かれたものだろうか?もちろん、空撮等を請け負っているので、顧客へのセールストークとして、「安全性」をユーザメリットとしてうたっているのはあるだろう。しかし、これは明らかに別の想定読者がいる。推測するに「ドローンビジネス(空撮分野)に参入を考えている人」「個人でドローン空撮をしようとしている人」だろう。彼らに読んでもらって、ドローンを飛ばすことに躊躇してもらえれば幸いというところか。

これらの記事を書いている人が意識的にやっているのか、無意識なのかはわからない。ただ、この狂信的なまでの人混みでの落下事故の危険性を煽る態度は、ちょっと考えるところがある。さらには「ご自身の判断と責任で、空撮の発注・空撮の実施・クレーム発起をお願いします」とまである。「撮影は請け負うが、そのときの損失は発注者側が取れよ」とも読み取れる。

新しい分野にチャレンジするというのは、人を疑心暗鬼にさせるということなのかもしれない。まるで芥川龍之介の「蜘蛛の糸」にでてくるカンダタみたいだ。結局のところ、人間の敵は人間なのだな。

憧れの巨大構造物

宇宙エレベータ協会

宇宙エレベータ協会なるものを知る。宇宙エレベータの実現に向けて、クライマーコンテストを行っている。気球につなげたロープの上をクライマーと呼ばれるもので登らせて、その技術を競うというものだ。

これだけであれば、ロボットコンテストのように工学系のコンテストイベントのようで微笑ましいかぎりだ。しかし、実際に宇宙エレベータが実現できるかどうかというと、このようなクライマーコンテストをやる前に、駄目だろうという気がしてくる。

宇宙エレベータとは

話が前後するが、宇宙エレベータ(または軌道エレベータ)とは、静止軌道に宇宙ステーションを置き、その両端へケーブルをバランスを取りながら伸ばしていくことで方端を地球の地表面に、もう方端は地球から7万〜10万キロメートル先まで伸ばしていくというもの。移動は、このケーブルを這うように、クライマーと呼ばれる乗り物を走らせることで行なう。いわば、宇宙版の鉄道というイメージか。

実際には、7万〜10万キロメートルというケーブルを張れる強度を持つ材料がなかったが、最近、カーボンナノチューブ等がでてきて、にわかに宇宙エレベータが注目されるようになった。

宇宙エレベータは実現可能か

一つ思考実験をしてみる。Wikipediaの記述によると、紙程度の厚さ0.1mm、幅1m、長さ1km の重量は3.7kg。長さ10万km では370トン。大林組が試算した実用的な運用に耐えうるケーブルの質量は、7000トンとなるという(Wikipedia:軌道エレベータ参照)。となると、7000トンの原材料を静止軌道に投入しなければならないことになる。

現在のロケットで静止軌道に投入できる物体の質量は約5トン程度、まるまる5トンの資材を建設ステーションに送るためだけでも1200回、ロケットの打ち上げが必要になる。実際には静止軌道のステーションやナノチューブの製造装置、人員、それらを維持する消耗品が必要となり、さらにロケット打ち上げ回数が必要となる。

いずれにせよ、宇宙エレベータを実現するためには最低でも数千回のロケットを打ち上げる必要がある。宇宙エレベータの建設を主張する側が論拠とする「ロケット輸送の高コストである」という主張は、それ自身が宇宙エレベーターの建設コストは高コストであるという背反したものになる。

もちろん、一度建設してしまえば低コストの宇宙往還ができるだろう。極めて細いケーブルでも地上とつながれば、数十キロ〜数トン程度の軽量のクライマーを使って原料を宇宙に運べるとも考えられる。であれば、打ち上げ回数は数百回レベルにまで下げることができるのかもしれない。

また実際にケーブルの寿命と張替え期間を見積もらなければならない。極端に寿命が短ければ、宇宙エレベータでの往還のペイロードはほとんどケーブル張替えのための資材を運ぶことになりかねない。

そしてなにより、それだけ数のロケットを打ち上げるためには現在より低コストのロケットが必要であり、また打ち上げ回数の需要が生まれれば低コスト化に向かうだろう。低コストのロケットで宇宙に行くコストが下がれば宇宙エレベータを建設せずとも宇宙往還の機会は多くの人に与えられることになる。

実用的なコストで航空機輸送ができる現在、東京とロサンゼルスの間に橋をかけようとする考えは一笑に付される。宇宙エレベータが同様の反論を回避するには、あまりにも検討が不足している。

エコキャップ顛末

少し古い話題だが、日経ビジネス7月27日号にエコキャップ推進協会の理事長のインタビュー記事が掲載されていた。2015年4月頃にマスコミに取り上げられた「世界の子どもにワクチンを届ける目的でペットボトルのキャップを集めているのに、ワクチンとの交換されていない」という問題で矢面に立たされた組織の人物だ。

この記事に書かれているエコキャップ推進協会の理事長へのインタビューの概要をまとめると、以下の通り

  • ペットボトルキャップのリサイクルを思い立ったきっかけは、本体のリサイクルは行っているのにキャップはしていないという気付きから
  • キャップのリサイクル品をメーカーに持ち込んでみると採用が決まり、本格的な事業に乗り出す
  • 2007年に「エコキャップ推進協会」を設立
  • ポリオワクチン代として寄付することを決めたのは、設立当時に「世界の子供にワクチンを日本委員会(以後、JCVと表記)の代表と会って少額の寄付でも成り立つことが分かったから。そこでJCVに寄付することにした
  • キャップ回収にあたっては、JCVへの寄付を表記し、受領証にも「ワクチンxx本分に相当」書き入れていた
  • ただ、エコキャップ推進協会とJCVとの間に契約書はなかった
  • 2014年、キャップ回収と分別をするエコステーションを設立し、そこで障害者を雇用するため1134万円を拠出
  • 2014年、取引先の経営破綻で2200万円の売上が回収不可になる
  • 2014年9月以降、上記の事情によりJCVへの寄付は行っていないのは事実
  • 寄付がないことを非難する旨の内容証明郵便がJCVから送付されてくる
  • 活動によって私服を肥やしたことはない

一方、JCV側の主張は、以下の通り。

  • JCVとエコキャップ推進協会との組織的つながりはない
  • しかしJCVの名前を使って、キャップ回収しているのだから、別用途に使い、ワクチンに寄付しないのは問題

ビジネスモデルとして考える

エコキャップ回収については、どれだけの収益が上がっていたのか、この記事でわかった部分もある。2007年に始めた最初の収益でワクチン代を寄付した額は約23万円。その後、急拡大して2014年8月期の収益は約1億円。

キャップ回収による活動の当初から、「輸送、分別、保管にかかる費用を考えれば、その分を現金で寄付したほうが良い」という懐疑論はあった。ただ慈善活動であることから、輸送、分別、保管にかかるコストを安くすませた部分はあるだろうが、これだけの収益を出したという点は注目しておきたい。

この問題にいろいろ意見を持つ人はあるだろう。ただ、ビジネスモデルとしては成功した。このエコキャップリサイクルによる慈善活動は、日本人の持つ厄介な部分をうまく解決した。要するに「金は出したくないが、どうせ捨てるペットボトルのキャップで社会貢献でき、自分の幸福度を上げたい」という顧客ニーズを体現したビジネスモデルだ、ということだ。

その後

JCVとエコキャップ推進協会は、別の道を歩むことになった。JCVはJCVで独自にキャップ回収を始めた。JCVのキャップ回収代表者には、大手のスーパーチェーンや百貨店も名を連ねている。

ありきたりな結論になるが、善意をベースに置いた活動こそ、詳細な情報開示を行うべきだろう。

だが、エコキャップ推進協会のサイトからもJCVのサイトからも今回の寄付金騒動の件は、すべて削除されている。お互いにこの件は黒歴史なのだろうが、だからこそ記憶として残しておくべきだろう。

また、他の意識高い系の団体にもいえることだが、実務があまりにも下手だ。契約書すら交わしていないという両組織が、収益を効率よく効果的に活用できるのか。

参考

心を潤すものなど無い

「コラーゲンを摂取すると肌が綺麗になる」と誤読するようなCMを目にする。コラーゲン飲料で「肌が潤う」と読み取れる機能食品なるものが各社からでている。

この状態について、あるセミナーでの講演内容が話題になった。群馬大学の高橋久仁子名誉教授は「何が潤うのか」とメーカー各社に質問状を送った所、カゴメから以下の内容で回答があったとのこと。

コラーゲンでうるおうのは「喉」です

それでも、カゴメはまだ良心的な言い訳といえる。

似非科学の根絶は果てしなく道が長い。しかし、広告の文言において、「主語」と「目的語」が何を指しているのか、明記されているか、何を隠しているのかを見抜くことが第一歩なのだ。

参考

健康食品メーカー「コラーゲンでうるおうのは『喉』ですキリッ」 2015年5月群馬大名誉教授・高橋久仁子先生講演まとめ - Togetterまとめ

緊急援助隊のミッション

「自動車大の岩」次々と村直撃、ネパール地震体験談(AFPBB)から引用。

 地震でアスコラーニさんの他、観光客約60人とネパール人20人が、徒歩かヘリコプターでしか到達できない辺境の山あいに孤立した。急な傾斜からの落石が続いていたため、外へ出ることはできなかった。最終的に救助されるまで、ヘリコプター3機が行き来するのをただ眺めるしかなかったという。

 地震から3日目、アスコラーニさんたちの元へようやくヘリコプターがやって来たが、パイロットから日本人の救助のためにだけ来たと告げられ、希望は打ち砕かれた。それから数時間後にヘリ2機が到着。今度はイスラエル人のみの救助だという。ハイカーたち皆で抗議した結果、負傷したネパール人2人を優先することになった。

 そこからさらに36時間が経過してもヘリが来る兆しはなく、村の雰囲気も次第に重苦しくなっていった。その後、ようやく米軍のヘリが到着し、数回に分けて全員が救助された。

感想:事件は会議室で起こっている

企業経営者が右傾化する訳

『日教組を破壊せよ』

感想:呆れた。

日教組を破壊せよ」という赤尾敏とか、ネトウヨのような単純なメッセージでブログを書くというのは、どういうことなのか。現状の日教組の組織率はすでに3割を下回っているとか、文科省ともすでに和解しているとかいう話をしても仕方がない。ただ気になった部分を引用する。

第二次大戦後、進駐軍司令官として日本にやってきたダグラス・マッカーサーは武士道に根差した日本人の卓越した精神力を根本的に破壊しようと計画し、戦後教育を通じてそれは着実に実行しました。それが今日の日本人の精神的・道徳的退廃を招いた、といっても過言ではないでしょう。

(中略)

とにかく日教組を打っ壊し、受験勉強だけを主体とした教育から道徳教育を中心に据えた教育へと制度転換を図るのです。国歌斉唱など人に強いられてやるものではなく、然もいい大人に強いてみたところで無意味ではないかと思います。

ある種の経営者がなぜ道徳教育の信奉者になるのか

北尾吉孝氏が「経営者」としては優秀なのは、いまさら説明するまでもないだろう。野村証券出身で、ソフトバンク孫正義の元でファイナンス部門を仕切り、その後ソフトバンクと袂を分かち、SBIホールディングス東証一部に上場させた豪腕経営者だ。

ただ、この手の叩き上げの経営者が、やたらと「道徳教育」やら「武士道」やらを語り、右側スピーカーの音量を上げていくのはなぜか。それでいて親米保守的(←「虎の威をかる狐」「武士の裏で暗躍する商人」「拝金主義」の別様態、堕落の極みだよね)な言動を振りかざしたりしている。

企業は軍隊組織がベースになっている。であれば、作戦立案や兵站計画するエリート士官以外は前線に配置する要員が必要になる。であれば、ある種の経営者が「兵隊」、「二等兵」あるいは「鉄砲玉」のようなものを集めたくなる気分になるのは理解できる。自分の命令に躊躇なく従い、実行し、弾除けとなり、責任を代行して腹を切ってくれる者が欲しいのだ。そのような兵隊、二等兵、チンピラ、鉄砲玉には、知性は最低限で十分、他の犠牲になる行動を正当化してくれる思想を持ってくれていたほうが、なにかと使い勝手が良い。

ある上場企業の経営者の人は「そんな前時代的な経営者はいずれ消えるよ。ネット社会では威圧的な経営者はネットに晒されて集中砲火をあびるから」と言っていた。そうなって欲しいと思う反面で、難しいのではなかろうか。恐らく、この手のマッチョ思想の経営者はこれからも出現し、一定の数を占め、時には勢力拡大することもあるだろう。経営者の口から「道徳教育」「武士道」という言葉が聞こえてきたら、よくよく注意したほうが良い。