無知と無能の間に

無知無能者、固人之所不免也

日韓合意の行きつく先

年末、突然とも思える日韓の外相会談で、いわゆる従軍慰安婦問題の妥結交渉が報じられている。ネット言論を自認する方々が発狂し、その他の識者がほとんどスルーする中で、以下のような言説を見つけた。

慰安婦新財団、朝日と福島みずほ氏が自発的出資を

とくに、読むべき内容はない。石井氏という売文業者が国内の自虐史観中韓に不当に貶められていると考えている人々の感情を慰安して小銭を稼ぐために書かれた内容だ。実際、

私たち日本人がなぜ巻きこまれるのか

と問題提起をしつつも、それに対する分析も推察も行われていない。巻き込まれるのは嫌だという感情の発露だけ。本人も「筆者も感情的に反応することをお許しいただきたい」と認めているように、極めて次元の低い内容だ。ただ、内容は話にならないが、国内の自虐史観中韓に貶められているという人たちを切ってまで安倍政権が動いたことは考えなければならないだろう。韓国側も合意には強い反発がでているというニュースが流れている。

この時期に特に解決を急ぐ緊急性のない(重要ではある)、しかも日本がわざわざ出向いて、しかも歩み寄る形で交渉を行った背景には何があるのだろう。今回の件でアメリカの意思が強く働いたということは言える。今回の合意について、アメリカのケリー国務長官とライス大統領補佐官が2015年28日に相次いで歓迎する声明を出し、合意を高く評価したとニュースでは伝えられている。アメリカの狙いは以下のようなものだろうと愚考する。

  • オバマ政権が次の政権に移る前に極東でのアメリカの立ち位置(特にアメリカ軍の展開)を明確化
  • 韓国を自陣営の一員であることを再確認させ、中国への接近を自重させる
  • 韓国をTHAADに参加させて、日米韓の枠組みで極東の安全保障を担保
  • 一方で、THAADの導入の引き換えに極東の米軍の削減を行い、駐留コストを削る

アメリカの方向性は、地味に小出しなりながら、明確化していくだろう。2015年10月に、オバマ大統領と朴槿恵大統領の首脳会談で、。当面日本はそれに対して盲目的に追従するだけであろうが、一つ気になる点がある。それは、ここで取り上げた日本を取り戻そうと考えている人達も追従していくのかという点だ。

国内の自虐史観中韓に不当に貶められていると考えている人々が、「安倍政権への批判を強める」こともせず、「アメリカ頼みからの脱却」を主張することなく「慰安婦新財団、朝日と福島みずほ氏が自発的出資を」のタイトルに象徴されるように左への攻撃でお茶を濁そうとする。いつでもそうなる。まさか、とは思うが、「次の大統領選挙で共和党が勝利するまでの我慢だ」とでも考えているのだろうか。

このような鬱屈したエネルギーが、アメリカに向かう日は来るのか。

社労士炎上ブログのビジネスモデル

中小企業に助言を行う立場の社会保険労務士が、会社からの相談に答える形で「社員をうつ病に罹患させて退職する方法」というブログを2015年11月24日に公開し、すぐさま炎上する騒ぎとなった。

現在、ブログは閉鎖されているため、読むことはできない。が、そこはデジタルの大海に一度出されたものは、半永久的に漂うことになる。中身を類推すると、「辞めさせたい社員に対しては、就業規則の網をかける」「これに違反したとして徹底的に反省文を書かせ続ける」「規則違反を根拠に降格減給を実施する」等々の合法的パワハラで対処せよというものだった。最後の一文には、以下のようなことまで書いてあったようだ。

「モンスター社員に精神的打撃与えることが楽しくなりますよ」

12月19日の毎日新聞で、過労死家族の会などが、厚生労働省監督責任を果たすよう求めたと報道。また会のメンバーの「ブログの内容は殺人を勧めるようなもの」いうコメントを掲載した。

Amazonで検索すると、この社労士の著書が20冊以上ピックアップされてくる(共著もある)。氏の本には「首切り」「賃下げ」「正しい解雇」とか、どぎついワードがタイトルに並んでいる。通常のタイトルもあるが、煽ったタイトルが付けられた書籍の出版年を見てみると、2002年から2008年ごろである。小泉改革の頃と不思議と一致する。

話を戻す。Amazonのレビューを見ると、経営者や人事担当者の評価が高いことがうかがえる。彼らが、使えない社員を追い出したいとなるのは、(それが正しいかどうかは別として)自然な成り行きだ。社労士の本来の目的は労務管理を通じた労働環境の向上にある。しかし、諸刃の剣で、制度の穴を見極め、労働者を体よく追い出すノウハウを持っているということにもなる。この一件によって知名度がワンステージ上がった。炎上であったとしても、だ。むしろ仕事の依頼は増えるかもしれない。

ただ、やりすぎたという点はあるだろう。社労士として事実上資格停止に追い込まれるとすれば、だ。書籍として出ているものを少し読んだかぎりでは、ここまで自己主張をオーバーヒートさせる内容はなかった。ブログというのは、編集者の付く著書と違い、誰からも事前に査読されることはない。そのため、情報が正確である必要もないし、事実をねじ曲げてもいいし、他人の文章の引用に気を使う必要もあまりない。自分が基準だからだ。

以前にも引用したが、再び引用する。詩人の荒川洋治はブログを書くことについて以下のように述べていた。

 ブログという自己表現は危険である。ブログは、人に見られている、人に読まれているということを前提に書いている。ブログは自分のことをどんどん書ける。どんどん書ける、たくさんの言葉を使っているということは、逆に「自分が無い」という状態でもある。「自分はあるんだ」「いま、自分のことを書いている」と書き手は思っているかもしれないが、実は希薄だったりする。自分が無いからどんどん書けるといえる。

ブログを書くという行為は、本質的に危ういことなのだ。

共和党はもう大統領選挙に勝てないかもしれないという話

アメリカ大統領選挙の予備選で、ドナルド・トランプ氏が注目を浴びている。前回の選挙があまり話題にならなかったなと思っていたら、「メキシコ移民を強制送還」とかいう人物にわざと脚光を浴びせることで、選挙を盛り上げようとしているのかと邪推をしたくなる状況だ。トランプ氏が炎上発言するほど、排他的な高齢で低学歴の白人の支持を集める状況になる。ほとんどジョークとしか言えない状況だが、どうやらこの状況は、アメリカの大きな地殻変動が起きていることの一つの現れのようだ。

2015年2月にある書籍がアメリカで発刊され、話題となった。そのタイトルは、「2016 and Beyond: How Republicans Can Elect a President in the New America」。日本語訳にすると「2016年以後、どうすれば共和党は新しいアメリカでの大統領選挙に勝つことができるか」とでもなるだろう。逆に言えば「もう、現状を変えない限り共和党はアメリカ大統領選挙で勝てない」という内容だ。しかもこの本を書いたのは当の共和党のコンサルタントであるNorth Star Opinion Researchの研究員だということだ。

アメリカの国勢調査によれば、現在白人系はアメリカ全人口の62%を占めるが、2060年には44%まで減る。一方でヒスパニック系は2060年には現在の倍の30%まで増えると予想されている。1976年に全有権者のうち白人系は88%を占めていたが、2012年は72%まで低下、2016年には69%にまで落ちる計算になる。「であれば、非白人の75%を獲得するだけで民主党大統領選挙に勝てる」と主張する。

一方、共和党最後の大統領だったジョージ・W・ブッシュは、スペイン語で演説も行うなど、非白人系の票の取り込みを図った。それでも非白人系の26%の票しか獲得できなかった(それでもこれまでの共和党の大統領候補で最大)。

2015年11月の世論調査で、トランプ氏についで支持率2位のベン・カーソン上院議員はアフリカ系の子孫。3位のマルコ・アントニオ・ルビオ上院議員はキューバ移民の子。4位のジェフ・ブッシュ元フロリダ州知事も妻がメキシコ人で、カトリックに改宗し、スペイン語も話す。

ところがこういう路線は、共和党支持者の排他的な「超保守の」白人の支持を集めにくい。トランプ氏は最近でも「イスラム教徒の米国入国禁止」を言い出して、強い批判を浴びた。

トランプ氏がなぜ発言を先鋭化できるのかといえば、自分の金だけで選挙ができるから。他の候補者は支持団体から幅広く寄付を募らなければならないため、どうしても総花的な話をしなければならなくなる。

さらにトランプ氏は、共和党の候補を降り、第三の候補として大統領選にでることも選択肢にあるはずだ。共和党としては、トランプ氏が第三の候補として立候補されてしまえば、共和党に集まるはずの票が分裂してしまうため、さらに大統領選挙は難しいものとなる。トランプ氏がマジで共和党候補になる可能性は、想像以上に高いのかもしれない。

出版不況の活路は右旋回なのか

COURRIER JAPONの2016年1月号、成毛真の連載コラム「国連は大丈夫か」が掲載されいた。内容は、国連を巡るいざこざについて中韓を茶化した内容だ。そして注目はユネスコが世界記憶遺産に南京事件に関する文書を入れたことに触れ、ユネスコ自ら存在意義を否定することだと書いている。

ふむ。

博識で知られる氏は、「シベリア抑留に関する文書」を日本が世界記憶遺産に入れて、ロシアから猛抗議を受けていることも知っているはずだ。知っていて、このような片手落ちのコラムを書く行為をどういうように理解すべきか。書籍の分類からして対象読者に媚を売ったといわけではないだろう。表記は抑えられているが、中韓を揶揄したい本音が透けたと見るべきか。

いまさら書くことでもないが、嫌韓や嫌中国の書籍は売れるらしい。ネトウヨなるものは、実は比較的高学歴で収入の高い層がコアだという話も聞く。想像以上にネトウヨ化というのは深刻なのかもしれない。

堀江貴文と寿司職人と

堀江貴文氏はが「寿司職人が何年も修行するのはバカ」と発言して、物議を醸している。寿司職人として一人前になるためには「飯炊き3年、握り8年」という話についても、「そんな事覚えんのに何年もかかる奴が馬鹿って事だよボケ」とも。なるほど。いつものことだ。

ところで、堀江貴文氏は自身のYoutube番組「ホリエモンのQ&A72」で、ライターからの質問について、以下のように語っている

「仕事は方法論とか差別化とかじゃねーよ!成功する人は才能があるうえで人の何十倍も努力してる」 「書籍『ゼロ(堀江貴文著)』のライターの古賀史健さんなんかを見ていると思うんですけど、現代のイタコという感じで本人が乗り移っているような、本人よりも本人らしい言葉で書ける状態なんです」。 「その裏側には膨大な努力の痕があって、キーボード叩きすぎて腱鞘炎になったり、私の本を40数冊全部読んで付箋びっしりだったり」。

びっくり。怒涛の根性論。寿司職人の努力を馬鹿にする前述の話と相反する意見だ。なぜ寿司職人の弟子を馬鹿呼ばわりして、子飼いのライターを褒めちぎるのか。確かに、「無駄な努力」と「有用な努力」の差はある。しかし、それ以上に深い谷を感じる。

いや、そんな難しい話ではないのかもしれない。要するに堀江氏の収益に直結するからだ。氏にとってはライターを褒めることは生産設備のメンテナンスの一環なのだ。褒めて人を感動させる文章が生産されるのであれば安いものだ。徹底的な、拝金主義者なんだから驚くことでもない。臭い飯を食って、シャバにでてきたときに残った「知名度」を徹底的に換金手段として利用しているわけだ。SEALsを攻撃するのも同じ理由で自分の収益を害する可能性を叩いて、炎上を起こし耳目を集めることが彼にとってのブランディングの手段なのだ。

そう考えてみると、刑務所で転向することな拝金思想を純化させてきたということになると、やはり信念のある人間を刑罰で矯正することはできないということなのかもしれない。

ふうせんに飛ばされる

テレビに出ようという人間は注意深く観察する必要がある。特に「情熱大陸」のようなドキュメンタリータッチで人を持ち上げようとするような種の番組に出る輩は。

もちろん、自分自身の知名度を上げることは悪ではなし、それだけを持って批判するというわけにもいかない。

さて、この「情熱大陸」で2015年10月18日の放送で取り上げられた岩谷 圭介氏だ。氏は、バルーンをうちあげ、成層圏からの写真を撮影することに長年取り組んでいるという。以下参照。

*ふうせん宇宙撮影

内容は丁寧だ。どうでもいいことにも丁寧に書かれている。しかし、それにも増して気になる点がある。

「安全性に対するアピール」と「同じように気球による宇宙撮影にチャレンジしようとする者への攻撃性」だ。技術をオープンにしないことについて、「安全性」を盾にし、安易に真似て事故を予防することで正当化している。それでいて、情報を公開している感をユーザに与えることで、自己への宣伝に利用している。

以前、ブログに書いた「ドローン恫喝」で紹介したゼロなる企業と、岩谷氏は同じで、芥川龍之介の「蜘蛛の糸」にでてくるカンダタのようだ。これは、自分の生存圏を守るための防衛本能なのだろうか。おそらく、フリーランスで生きるというのは、この種の苦しさがあるのだ。

ものづくり女性起業家なる存在

UPQとう会社を知る。ワールドビジネスサテライトに登場していたのだ。番組の中で紹介された若手女性起業家のアイデアメモからは、STAP臭、小保方晴子臭がした。

若手女性起業家の経歴によると携帯電話の開発を仕事にしていたという。しかし怪しい。カシオ勤務は事実だったとしても、開発業務をやっていたというより、良く言えば開発サポート、雑用係といったところではないのか。

羊の皮をかぶった中華ガジェット

2015年8月に行われた製品発表会には、SIMフリースマートフォンや4Kモニタ、イヤホン、ガラス製キーボードなど多岐にわたる製品並んでいたようだ(週刊アスキー記事)。

だが、実態としては、すでに他社で販売されているものと同等の商品と思しきものを色やデザインを変えて商品群として並べている。要するに、この社長はイノベーターではなく、キュレーターということなのだろう。

また「秋葉原発」、「若手女性起業家」といって持ち上げ、Engadgetがやたらとプッシュしている。要するに物語を紡いで、ものを売ろうというスタンスのようだ。

また、色々話を聞いてみると、UPQが製品開発しているというより、ほとんどCEREVOという家電ベンチャーを名乗る会社が引き受けているようだ。CEREVOという会社はiPhoneがあるにも関わらずネットに画像を自動転送するデジカメなる、あんまり頭を使っていない製品を出して、コケたはずなのだが。とっくに倒産しているとばかり思っていたら、驚くことに、たいした製品も出さずに80人規模の従業員を抱える会社になっている。口先が達者であれば、金余りの現在、運転資金を集めるのは楽勝ということか。

さらにUPQという会社の背後には、DMMがいる。実際、UPQは「DMM」系列のオフィスに入っている。最終的に、どうしても資金が回収できなければ、AVに出演させればいいわけだ。「噂の起業家が、最後のチャンスをかけて文字通りの体当たり」とかなんとかのタイトルで売りだして。本当にそこまで考えているのであれば、ビジネス巧者はDMMだったということだろう。

参考